脂肪肝の原因は本当にコレステロールの多い食生活なのか?
WBSのシリーズ企画、「治る!最前線」。2018年1月31日(水)は第79回「肝臓がんの最新治療」でした。肝臓がんはお酒を飲まない人でもなることがある、脂肪肝からがんになる人が増えているとのこと。
実は、シリーズ冒頭に次のようなナレーションがありました。
「コレステロールの多い食生活を続けると、脂肪が肝臓にたまる脂肪肝と呼ばれる状態になる」
「意義あり!」です。
「脂肪肝の原因の説明は、本当にそれでいいの? 問題ありでしょ。」と思い、改めて「脂肪肝」について、調べてみました。Googleで「脂肪肝」を検索したところ1位はジェネリックの沢井製薬が作っているサイトでした。
脂肪肝の治療のための食生活改善というと、まず脂っこいものを減らすと考えがちですが、それ以上に気を付けたいのは糖質です。日常的に糖質を摂り過ぎていると、脂肪肝になりやすいことがわかっています。特に果物の果糖は吸収がよく、肝臓で中性脂肪になりやすいため、注意が必要です。
ごはん、パン、麺類は、ほんの一口残すだけで、1ヶ月に500g、4ヶ月で2kg減量できると言われています。果物は、旬の味わいとして楽しむ程度がオススメですが、毎日食べたい人は1日に1/2個を目安にして、朝食時に食べましょう。
他サイトも読んでみましたが、脂肪肝は糖尿病との関連がとても強いことがわかりました。「血糖値」・「インスリン」という言葉は、健康を考える上てとても重要なものだと、痛感しています。つまり、ほとんどの場合、血糖値を急激に上げない食事・工夫が大事だという事です。もう一つ、消化器病学会の内容を引用します。
【脂肪肝予防の生活習慣改善のポイント】
脂肪肝の治療は,その原因により異なります.アルコール性の場合は,とにかく節酒,禁酒が一番になります.非アルコール性の場合は,肥満,高脂血症,糖尿病が原因であれば,食事療法,運動療法をもとに高脂血症,糖尿病の薬物療法が必要になります(図10).ただし,急激な体重減少は,かえって脂肪肝の悪化をまねくことがあるため,1ヶ月に2〜3kgの体重減量を目標としましょう.食事療法のこつは,第一に,ごはん,くだもの,おやつ,ジュースを減らすことにあります.具体的には,一食にご飯はお茶碗に軽く一杯とします.味付けはうす味にします.また,甘いものや間食の習慣をやめるようにします.お菓子,缶ジュース,ペットボトル飲料,アイスクリームなどのとり過ぎに注意します.油っこい料理を減らします.良質のたんぱく質,新鮮な野菜はきちんと食べるようにします.これは,食物繊維が便通を整え,便とともにコレステロールを排泄すると考えられているためです.
「脂っこい料理を減らします」とありますが、一言だけです。WBSで言っていたのとはニュアンスが違っているとは思いませんか? 第一に減らすべきなのは糖質なのだと思います。糖質の摂取を控えることで、中性脂肪を減らすことができ、それは脂肪肝の改善にもつながります。
先日の「たけしの家庭の医学」で、中性脂肪を下げる食材について取り上げていましたが、そこでも”中性脂肪を下げるためには糖質を摂取しないことが最も大切”と説明されていました。
また、5年ごとに発表される厚生労働省の「食事摂取基準」。その2015年版では、コレステロールの上限値が撤廃されました。
「コレステロールは体内で合成できる脂質で、食事で摂取するコレステロールの影響は少ないということが分かってきたのです。摂取目標量を決める科学的根拠が少ないため、最新版の食事摂取基準では、コレステロールの目標量がなくなりました」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)
【脂肪肝=コレステロールの多い食事が原因】というイメージを抱かせたのは罪が深いと思います。
短絡的な思い込みによるものだと推測します。しっかり勉強して、より正確な情報を提供してほしいです。
「治る!最前線」で説明されていた肝臓がんの原因など
・肝臓がんの主な原因は肝炎ウイルスの感染や、過度な飲酒などと考えられていた。しかし、最近では脂肪肝から肝臓がんになる患者が増えている。肝臓がんは誰もがなる可能性があるといえる。
・脂肪肝とは脂肪が肝臓にたまった状態。この脂肪肝を放置すると長い年月をかけて肝臓がんになる。
・脂肪肝の原因は、食生活などの生活習慣。
国立国際医療研究センター病院 理事長 國土典宏医師
「(肝臓がんは)いわゆるメタボリック症候群、肥満とか糖尿病とかと関係があると言われていますから、お酒を飲まない、でも少し太っているという人が、検診かなんかで見つかったようなのは、典型的な肝臓がんです。」
・肝臓がんによる死者は年間およそ3万人に上る。
・肝臓がんは自覚症状のないまま進行する恐ろしい病といえる。今回紹介された最新治療は、多くの人を救っていくことだろう。
肝臓がんの最新治療
「治る!最前線」で紹介されていた最新治療は2つ。
(1)手術の時、必要部分だけを正確に切り取るための技術の活用。
(2)MRIと放射線治療気を組み合わせた最新の機械による治療。ピンポイントでがん細胞にのみ放射線を当てることが出来るので、強い放射線を使うことが出来て、効果が上がる、という事でした。
ICGという特殊な薬剤を使うことで、正確・安全で出血が少ない肝臓の切り方ができる
取材先:国立国際医療研究センター病院(東京・新宿区)
医 師:同病院 理事長 國土典宏医師
患 者:同病院に入院している30代のNさん
状 況:ひと月ほど前検査で肝臓がんが見つかった。肝臓がんの大きさはおよそ1.5cm。
原因は肝炎ウイルス。Nさんは最新の手術を受けることになった。
Nさん 「どうしてもすぐに考えるのは、いつ死んでしまうのか、ということ。今後の生活はどうなるのか。仕事は続けられるのか。」
ICGとは:ICGは肝臓のタンパク質と反応し、光る性質がある。
手術の様子
医師が準備したのが、ICGと呼ばれる特殊な薬剤。このICGをがんの近くの太い血管に注射する。
肝臓の中には太い血管があり、血液はそこに繋がった毛細血管の範囲にしか流れない。肝臓がんは血管の中を通って転移するため、血液が流れる範囲に広がっている可能性がある。
ICG を注射すると、血液が流れている範囲を光らせて見つけることができる。光ったところを切除することで、がんがある部分だけを正確にとることができる。
肝臓は切除しすぎると命の危険があるためできる限り残すことが重要!
近赤外線という特殊な光を当てると先程のICGが取り込まれた場所だけが光っている。光を目印にがんを慎重に切り取っていく。
がんのある部分が取り除かれた。
手術は6時間ほどで終了。ICG を使った手術は現在臨床研究として行っている。
國土医師「(ICGを使うことで)正確で安全でおそらく出血が少ない肝臓の切り方ができる。肝臓は残せるに越したことはないというのが、今のコンセンサスだと思いますね。」
手術が行えない患者に対する新しい治療法
取材先:国立がん研究センター中央病院(東京・中央区)
医 師:同病院 放射線治療科 伊丹純科長
患 者:70代のSさん
状 況:2ヶ月ほど前に肝臓がんが見つかった。がんの直径はおよそ2センチ。
Sさんは高齢のため手術を行うのは難しいという。そこで最新の治療を受けることとなった。
Sさん「酒をどうしても飲むから、肝臓がんを気にはしてたんですけど、、、」
最新の治療装置を使った治療の実際
治療に使うのはまだ日本に1台しかない、最新の治療装置。体内を撮影できるMRIと放射線治療組み合わせた最新の機械。
(機械には「MRI DIAN (by VIEWRAY)」と書かれていました。)
治療は台の上に寝るだけ。
最新の治療はMRI でがんの位置をリアルタイムで撮影しながら、放射線をピンポイントで照射することができる。周りの臓器への副作用が少ないため、強い放射線を当てることができ治療効果が高い。
—解説————————-
肝臓は呼吸により動く。これまでの放射線治療では、肝臓が動いてもがんに放射線が当たるように、照射範囲を広くしていた。
そのため、周囲の臓器に副作用が出ないように弱い放射線しか当てることができなかった。
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照射中の様子はモニターに表示される。緑色の線で囲われた部分ががんで、赤い線が放射線を照射する範囲。照射範囲に間が入った時だけ放射線が自動で照射される仕組みになっている。
治療開始からおよそ30分で終了した。
これを2、3日ごとに合計10回行う。通院治療が可能。
Sさんのではないが、治療を続けた患者の検査画像が登場。治療後はがんがなくなっていた。
この治療は保険が適用されず、治療費は全額自己負担で210万円。
国立がん研究センター中央病院 放射線治療科 伊丹純科長
「今までの限界を超えた放射線をかけることができるので、今まで治らなかった腫瘍が放射線によって治癒するかもしれない。」
kojiは思った
今回紹介されていた治療法は大変すばらしく、患者さんに希望を与えてくれるものだと思います。早く保険適用になってほしい物です。
ただ、肥満対策や血糖値のコントロールなどによって、脂肪肝はある程度予防していけるそうです。せっかくだから、予防につながる情報も正確なものを提供してほしかったです。
糖質の摂りすぎに気を付けるべきであるというのは、現代人の健康維持にとって一番大事な事なのではないかと感じています。