2018年4月16日(月)のWBSのトップニュースは「尿1滴で”がん検査”が可能に」というものでした。
日本人の死亡原因の1位となっているがん。
がんはとにかく早期発見が重要ですが、がん検診の受診率は思ったほど伸びていないとのこと。
・肺がん—-男性51.0% / 女性41.7%
・胃がん—-男性46.4% / 女性35.6%
・大腸がん–男性44.5% / 女性38.5%
(2016年の統計。ほとんどが50%以下にとどまっています。特に女性の受診率が低い傾向に。)
がん検診の受診率が低いおもな理由は、下記のとおり。
「面倒だ。」
「そもそもどこでやってるのかよくわからない。」
「内視鏡やバリウム検査など、苦痛や負担が伴うので嫌だ。」
こうした中、尿一滴で”がんかどうかを判定できる”という画期的な研究が進んでいるという事でした。
大企業、そしてベンチャーがそれぞれ挑む、2つのアプローチ。その最前線が紹介されていました。
日立製作所 「尿中代謝物によるがん検査」
日立製作所研究開発グループ 坂入実さん
「世界中で次世代感検査技術のいろいろな競争が行われております。その中で我々は、(尿中の)代謝物に着目して解析をしようと。」
4月16日日立製作所が発表したのは、尿を使ったがん検査。検査に必要な尿はわずか1滴。
尿に含まれるアミノ酸代謝物を解析し、乳癌や大腸がん、胆道がんなどのほか、一部の小児がんも見つけられる可能性が高いといいます。
坂入さん
「老廃物ということで今までさげすまれてきましたが、非常に有用な情報が含まれてるということがわかってきました。」
今月から半年間大学と共同で実用化に向けた実証実験を行います。
実験にはスマートフォンのアプリを活用。
尿の検体を採取して、専用のアプリで撮影をします。(スマホを利用)
これで時間と場所が記録されます。
そしてこの検体を尿専用のボックスに入れてセンターに送ると、簡単にがんの検査ができるというシステムなのです。
解析結果はスマホに送られてくるのです。
自宅にいながらこの結果が見られます。
今回の実験では、検査の精度や実際にかかるコストを確かめた2020年代前半の実用化を目指します。
関連ページ
①がんとの”向き合い方”が変わる
──尿検体でがんのリスク評価が可能になる
②尿検体を用いたがん検査に関する実証試験を開始
線虫を使ったがん検査
同じく尿を使って、まったく異なるアプローチでガンの有無を判定しようするベンチャー企業も。
線虫と呼ばれる体長1ミリほどの虫を使ったがん検査です。
HIROTSUバイオサイエンス 広津崇亮CEO
「(線虫)はがんのにおいが好きで、寄っていくのがわかってきてますので、線虫ががん患者の尿に寄っていくのを指標にして、がんかどうか見分けるということ。」
研究施設では線虫をシャーレの中で培養しています。
HITOTSUバイオサイエンス 研究開発本部 魚住隆行博士
「この小さな生き物すべてが線虫になります。一枚あたりおよそ1000匹が生活していることになります。」
使うのは土の中に普通に生息していて、人間には寄生せず、害を及ぼさない種類です。
魚住隆行博士
「においを感じるセンサーになる器官が、人の3、4倍くらい多く持っていて、非常ににおいを識別する能力がすぐれている。
健康な方の尿は嫌いで逃げていく習性があります。一方がん患者の尿に対しては集まってくるという習性を発見することができました。」
試しにシャーレの端に検体となる尿をのせ、真ん中に線虫をのせます。
その状態のまま数分を置いておくと、健常者の尿は嫌いな匂いなので、線虫は逃げていきますが、がん患者の尿は好みのにおいなので、どんどん尿の方に近寄ってきました。
どの部位のがんか特定できませんが、がんがあるかないかについて判定できるといいます。
魚住博士
「線虫の精度は、、、、約90%くらいの確率で識別できています。]
現在は臨床例を増やしている段階で、2020年の実用化を目指しているとのこと。
線虫は、容易に安価で培養できるため検査費用はすべてを含めて1回あたり数千円ほどに抑えられると言います。
さらに最新の研究が進んでいました。
わずか1ミリほどの線虫の体内に、遺伝子情報を組み替えたDNAを注入。
特定の間のにおいを嗅ぎ分けられるスーパー線虫を生み出そうというのです。
広津崇亮CEO
「今、第1ターゲットは膵臓がんなんですよ。
膵臓がんは、早期発見がほぼ不可能なんですね。だいたい見つかった時点で末期。
線虫は、膵臓がんに強く反応することがわかってきているので、さらに、膵臓がんであるという事を見分ける線虫が出来れば、尿だけですい臓がんを早期発見できる、それだけでも革命的と言われています。」
関連ページ → HITOTSUバイオサイエンス
尿による検査のいいところ
尿の検査のいいところは、なんといっても、検体が手軽に提出できること。
血液検査は痛みが伴いますので、特に小さなお子さんにとってはとても大変だったとのこと。
これは容易に想像が出来ます。
またコストを下げられる可能性もあります。
より多くの人が検査出来るようになりそうです。
精度もよく、いいことずくめです。
ゲスト ロバート・A・フェルドマンさんのコメント
(ロバート・A・フェルドマンさんは、モルガンスタンレー・MUFG 証券シニアアドバイザー)
素晴らしいニュースですね。
・まず安い。
・間違った陽性が少ない。
・間違った陰性も少ない。
正確な検査ができるのは何よりです。
どうやって広めるかが次の問題です。
例えば・・・病気をした場合、自己負担を検査を受けているか受けていないかによって決める。
検査受けてる人なら病気した場合には2割負担。
受けていない人は8割負担、
そうすると、検診をまず受けるようになると思います。受診率は上がります。
その結果、医療費も下がりますし、健康寿命が延びます。このような広げる制度を考えてはどうでしょうか。」
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「医療費42兆円の中、国の研究開発費はいくらかというと2400億円です。
微々たる金額ですね。
(がんの検査方法などは)これだけ生産性の高い投資ですから、予算の配分を考えた方がいいんじゃないかなと思います。
生産性を考えると、研究開発費の予算配分をあげていくべきだと思います。」
kojiは思った
がんは克服されつつあると思うこともありますが、やはり恐ろしい・特別な病だと思うこともあります。
これからも治療法だけではなく、検査方法も進化させていかなければならないだろうと思います。
進化の方向は、より正確にという事だけでなく、より負担が少なくということも考慮されなければならないと思います。
koji自身、検査のため頭部のMRIを受けたときに苦痛が大きく、二度とやりたくないと思ったことがあります。
大腸の内視鏡検査も、やりたくないです。
毎年のバリウム検査はかなり我慢してやっています。
検診のハードルを下げることはとても重要だと思います。
尿一滴だと、体やお金の負担も随分軽くなると思います。
画期的ですね。早く実用化されることを願います。