2017年4月26日(水)のWBS 「治る!最前線」は、糖尿病合併症に関する内容でした。糖尿病が引き起こす恐ろしい合併症の治療の最前線が紹介されていました。
「治る!最前線」で糖尿病合併症について取り上げるのは2016年11月30日以来のこと。それほど間が空いていないにも関わらず、取り上げるというのは糖尿病とその合併症がそれだけ、関心を集める事柄だからだと思います。
70回目の今回は2016年11月30日の第65回と重なることもありましたが、取材する病院は違っていました。最新治療を行う病院も広がりを見せているようです。
糖尿病の恐ろしさ
◆埼玉県内、松下さん(仮名)の場合
松下さんは5年前、糖尿病が引き金となり、腎臓の機能をほとんど失った。以来、週に3回、機械で血液を浄化する人工透析を続けている。
松下
「もう治ることはないって言われているので、(人工透析と)つき合って、仕事と思ってやっている。」
人工透析に至る最大の原因は糖尿病である。
◆糖尿病により、年間3000人以上が失明している
◆糖尿病により、年間1万人以上が足の切断を余儀なくされている
糖尿病の患者数は予備軍を含めると、現在(推計)2000万人にも上る。糖尿病は全身の血管の病である。動脈硬化が進み、様々な合併症を引き起こす。
医師
「いろいろな臓器にいろんな形で影響を及ぼすので、糖尿病というのはすごく怖いですね。」
人工透析を防げ!機能低下を早期発見-腎臓の最新検査法
<埼玉医科大学病院 埼玉・入間郡>
20年間糖尿病を患う寺田さん(仮名76歳)。埼玉医科大学で、腎臓の機能低下を早期に発見する「ボールド MRI 検査」を受けました。これは、撮影した腎臓の酸素量をカラーで映し出すことができるというもの。
腎臓は日々、血管から酸素を取り込んでいるが、機能が落ち始めると十分に酸素を取り込めなくなることが最新の研究でわかりました。酸素が少ないと腎臓は青く映ります。その検査画像から、寺田さんの腎臓は機能が低下していることが分かりました。
埼玉医科大学 腎臓内科 岡田浩一教授
「早期であれば(腎臓は)回復するし、(病気の)進行を止めることができます。」
早期の段階で、生活改善や薬物治療を行えば、人工透析に至ることを防ぐことも可能だということです。
失明を防ぐ検査と治療法
<深作眼科 横浜市>
この日、検査を受けるのは12年ほど前から糖尿病を患う久松さん(仮名48歳)。
久松
「2ヶ月ほど前に仕事中に、視界が赤くなったので、びっくりして」
今回検査に使われるのは、「広角眼底撮影装置」といわれる最新の機械。まずは、血液映し出す薬を腕から注射し、検査装置で網膜を撮影。白く写っているのが血管。検査画像によって太い血管の周りで出血を起こしていることがわかりました。
糖尿病になると、網膜にもともとある血管がボロボロになり、それを補うため、新たな血管が作られてしまいます。それは細くもろいため、出血し、網膜の上でかさぶたになり、収縮しながら固まっていくのです。その時に網膜を引っ張り、網膜剥離を起こして失明してしまうのです。
医師
「新生血管もあるので、レーザー治療を行います。」
久松さんは早期だったため、最新の「レーザー光凝固治療」を受けることになりました。目の外から網膜に特殊なレーザーを照射し出血を止めるとともに、新しい血管ができるのを防ぎます。
1回の治療はおよそ10分。4回ほどに分けて、約2000発のレーザーを照射。写真には、レーザーを照射した跡が白く斑点のように映っています。この部分の組織は壊され、出血を止めることができました。
網膜は光を感じる組織ですが、レーザーは重要な部分を避けて照射されるため、視力に大きな影響はありません。
治療費は3割負担で、およそ5万円。
症状が進行した場合は、はがれた網膜を元に戻す手術を行えば、失明を防ぐことも可能だという。
深作眼科 深作秀春理事長
「内科的に糖尿病とわかっても、なかなか眼科で目の症状を調べる人が少ないんですね。少しでも(目が)おかしかったら、すぐに信頼できる眼科にかかるということが重要ですね。」
切断を防ぐ!最新カテーテル治療
<関西ろうさい病院 兵庫・尼崎市>
足の切断を防ぐ治療も登場しています。池田さんは15年ほど前から糖尿病患っています。右足の二本の指が壊死し、ほとんど歩くことができません。
「今回調べてみると、太腿のところの血管が細くなっている」
太腿の血管が糖尿病により数ヶ所狭くなっているため、足の先端まで血液が十分に流れず、壊死を起こしていたのでした。さらに壊死が広がると、膝から下の切断が必要になってしまいます。
池田
「怖いです。足を切るというのはね。杖をついてでも、今まで通り歩きたい。」
池田さんは最新の治療を受けることになりました。今回治療に使うのは、バルーンカテーテル。内側に水を入れるとバルーンが膨らむ仕組みのものです。これを足のつけ根から血管に挿入し、内側から狭くなった血管を広げます。
バルーンが徐々に膨らみ、血管を広げて行きます。従来の治療はここまででしたが、、、
今回はさらに、去年12月に保険適用された最新の治療器具を使います。それが人工血管。
これまでバルーン治療だけでは血管が再び狭くなってしまう恐れがあったため、この人工血管で内側から支えます。人工血管が血管の内側で広がっていくのがわかりました。治療は1時間で無事終了。
狭くなっていた血管が、治療後は、しっかり広がっているのがわかります。足の先端への血流が回復し、膝から下の切断を免れる可能性が高くなりました。
治療費は3割負担でおよそ45万円。
関西ろうさい病院 循環器内科 飯田修副部長
「患者の状況が軽症なほど、そのあとの治療のやりやすさは違いますし、入院期間も短くなるし、早期発見と早期治療が大事だと思います。」
日本総研理事長 高橋進氏の解説
高橋氏は、新しい医療技術について評価をしながらも、糖尿病の発生や重篤化を防ぐために行政がもっと力を入れなければならないということを話していました。
特に、人工透析はコストも高く、各都道府県の財政を圧迫していく可能性があることを強調。人工透析にいたらないようにするための施策を本気で行うべきだと言っていました。
高橋氏の発言のポイント
・人工透析になると月30万、年間で360万かかると言われている。もちろん高額療養費で、自己負担の上限があり、個人の負担は軽減されるが、それでもその差額は保険料や税金で賄わなくてはいけない。
・重症化を防ぐというのは個人の問題だと言われがちだが、実は都道府県の財政に直結する問題である。都道府県が積極的に手を打っていくべき。
・都道府県別、人工透析の件数のグラフ(全国平均を100とした指数による)
<人工透析が多いベスト3>
1 宮崎163
2 熊本149
3 沖縄147
<人工透析が少ないベスト3>
1 秋田51
2 島根43
3 鳥取・山口68
秋田と宮崎で3倍の差がある。九州の中でも福岡とか長崎は件数が少ない。単純に食文化のせいということではなさそうである。
・突き詰めていくと結局、糖尿病が重症化しないようにいろいろな予防をしてみたり、健康づくりをしている、そういうところは、割かし人工透析になるケースが少ない。それが出来ていないところは、人工透析が多くなっている。医療費の差は予防しようとする努力の差。
・医療費は県の財政。人工透析の件数が多い県というのは、その分の医療費が膨らんで、県民の保険料が上がってしまう。医療費がどんどんかかってしまうので、そういう県は、子供たちに使うお金がなくなってしまう。
・高齢化して医療費で上がると言われるが、予防や重症化予防に努めることが財政面でもいろんな面でも必要だということが如実に表れている。
まとめ
病気の予防は、「このくらいお金をかけたからこれだけの効果があった」という検証が難しい分野だと思います。健康についてはいろいろな要因がありますからね。しかし、その所をはっきりさせていくことが、医療費の削減への大事なプロセスだと思います。
人は、良い結果が確信できれば頑張れるものです。これをやれば医療費が減るということが思い描ければ、都道府県も頑張ることが出来ると思います。
そんな地道な研究を続けてくれている研究者に、ねぎらいとお礼を言いたい。
「お疲れさま。」「ありがとう。これからもよろしくお願いします。」