WBSの「治る!最前線」。少し前になりますが、2016年12月22日(木)は 第66回「甲状腺がんの最新治療」でした。その内容をわかりやすく整理しておきたいと思います。

最初にひとこと

見終わってkojiが感じたのはちょっとした不満です。

コーナーの最後で、大江麻理子さんが、
「この甲状腺がんの患者数は年々増えているということですが、早期発見できるようになっていますので、定期的に検査を受けることが重要です。」と言
っていましたが、ちょっと安易な言い方だなと思いました。

「定期的に検査を受ける」と言っても、普通の健康診断では甲状腺にかかわる検査はありませんし、「がん検診」も『胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮がん』が一般的。遺伝的に心配がある場合は別として、甲状腺がんの検診を自発的・定期的に受けるというのは現実的ではないと思いました。
(人間ドッグのオプションとして、甲状腺の超音波検査(甲状腺エコー)はあるようですが。)

「多くの検査を、定期的にやればいい」というアドバイスは、バリバリ働く世代にとってはアドバイスではありません。

『喉に違和感を感じたら、内科や耳鼻咽喉科だけでなく甲状腺も疑ってみましょう。もし、しこりを感じたら迷わず専門医へ。』というあたりなら、kojiも納得できます。
はっきりと、しこりを感じることが出来たら、すでに早期発見とは言えないようですが。それでも、しこりを意識していて、すぐ行動するのと、放置するのでは結果に大きな差が出ると思われます。安易に定期的な検診を進めるよりも、そこに重点を置いてほしかったなと思うわけです。

甲状腺・甲状腺がんについて

甲状腺とは

甲状腺は喉仏(のどぼとけ)の下あたりにある5cmほどの小さな臓器。羽を広げたような形をしていて、気管を取り囲むように位置しています。この甲状腺は体温調節や自律神経を整える機能を持っています。

甲状腺がんとは

甲状腺がんは、自覚症状があまりなく、発見しづらいといいます。
また、手術の際にも声帯の神経を傷付けないように最新の注意が必要だそうです。
そこで今、より正確で、確実な最新の治療法が次々に生み出されています。

(付け足し情報)
甲状腺がんでは通常、しこり以外の症状はほとんどない。違和感、痛み、飲み込みにくさ、声のカスレなどの症状が出てくることもある。
組織の特徴により、「乳頭がん」「濾胞がん」「髄様がん」「未分化がん」に大きく分類される。悪性リンパ腫を加えて分類されることも。
「乳頭がん」は甲状腺がんの中で最も多く約9割を占める。きわめてゆっくり進行する。「生命にかかわることはまれ」と書かれていることもある。治療後の経過はよいとされる。乳頭がん以外は進行が早かったり、転移性があったりして緊急性が高い場合もある。

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神経を傷つける可能性の少ないサンダービート(超音波凝固切開装置)による治療

ある日の「金地(かなぢ)病院」(東京・北区)

= 都内にある甲状腺の専門病院。

67歳のOさん。健康診断で首に異常が見つかっていた。この日、精密検査の結果が伝えられるのだ。
医師 「甲状腺の左側にがんがあります。11ミリ。」

Oさんに甲状腺がんが見つかった。
本人 「本人も全然わかんないんです。全然全く。症状もなんにもないんですけど。痛みも何もないんですね。こういうところにいかができると思わなかったですね。」

金地(かなぢ)病院 名誉院長 日本医科大学 清水一雄名誉教授
「ある程度進行しても自覚症状はないです。自分でしこりに触れるとか、気管を圧迫するとか、気道内に出血をするとか、そういうので見つかることはありますけど、それはかなり進んだ後です。」

甲状腺がんの患者数はおよそ4万8000人。女性に多く、30代から患者が増え始める。甲状腺の近くには様々な神経が通っているため、手術は神経を傷付けてしまう危険性がある。

日本医科大学 内分泌外科 杉谷巌教授
「(神経を)切ってしまうと、永久的に戻りません。」

気づかないうちに進行し、手術も難しい甲状腺がん。
先程のOさんは、神経を傷つける可能性の少ない、最新の手術を受けることになった。

まず、喉ぼとけのあたりを6センチほど切開する。そして医師が準備したのは、サンダービート(超音波凝固切開装置)と呼ばれる最新の治療器具だ。
この器具は、先端がハサミのような形になっていて、上の内側の部分から超音波の熱が出る。

がんの切除が始まった。超音波の熱は、ピンポイントで患部を切断し、周囲の神経を傷つける可能性も少ないという。1時間半ほどで手術が終わった。

治療費は保険が適用(3割負担)されておよそ30万円だ。

清水名誉教授
「(喉には)重要な神経・血管が沢山あるんですよ。サンダービートは、やりやすいです。」

リアルタイムで神経の損傷をチェックできる、新しい治療器具も登場

日本医科大学付属病院(東京・文京区)

杉谷教授
「手術中に確認して、神経を確実に残して甲状腺だけをとる。神経を必ず確認しなきゃだめだというのが、今やコールドスタンダードになっています。」

一体どのような治療器具なのか。

まず、喉にチューブを入れる。そしてチューブに神経モニタリング装置を取り付ける。神経に電気を流して声帯が動くかチェックする。声帯が動けば神経を傷付けていないと、手術中にリアルタイムでわかる仕組みだ。

手術が始まった。甲状腺がんが切除された。そして、神経に電気刺激を与える。するとモニターが反応した。神経は無事だ。これまで神経を傷付けても、気づかないことがあったが、この器具の登場で万が一神経を傷付けても、すぐに対処できるようになった。

治療費は保険が適用され、およそ13万円(3割負担)だ。(これは手術のみの金額。)

杉谷教授
「神経を確実に見つけて確実に残すことが大事なことです。患者さんの生活の質(QOL)に直結することですので、、、」

転移した甲状腺がんの最新治療

甲状腺がんは、転移するケースも多くその最新治療も登場している。

金地病院(東京・北区)

Nさん。44歳。去年甲状腺がんの手術を受けたが、肺に小さな転移が見つかった。

医師が治療に使う薬を準備する。金庫の中で厳重に管理されていた容器。この中には放射性ヨウ素という薬が入っている。ヨウ素の周りに、放射性物質がついているという薬だ。

飲むと、この薬はヨウ素を吸収しやすい甲状腺と、転移したがんのところに集まる。薬から出る放射線が、がん細胞ピンポイントでやっつけるという治療法だ。3ヶ月ほどでがん細胞を死滅させることが可能だと言います。

肺を切除する必要もない。治療は放射線が漏れないように、厳重に管理された特殊な部屋で行われる。

Nさんが部屋に向かう。この中で薬を飲み、8日間生活する。余分な放射性ヨウ素はに落として排出されるため、人体への影響も少ないという。

治療費は保険が適用されおよそ40万円(3割負担)。
(RI治療室と書かれた部屋の入り口には、「線量基準値以上 入室禁止」という張り紙がつけられました。)

清水名誉教授
「目に見えない甲状腺がんを叩く上では、いい治療法だと思います。」

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がん細胞をピンポイントでやっつけることができるというのは、とてもありがたいことです。心強く思いました。ただ、費用は掛かりますね。また、どこの病院でもやってもらえるわけではないと思います。

甲状腺がんは、対応しやすい乳頭がんとそれ以外では危険性が随分と違うようです。カンタンにひとくくりでまとめられないものなんだと今回学びました。

甲状腺エコーは1回の検査費用が3割負担で1050円のようです。ただ、ほかに診察料などもかかります。甲状腺がんの診断には重要な検査のようです。頭の隅に置いておきたいですね。