かまやつひろし(活動名:ムッシュかまやつ)さんが亡くなりました。今朝のニュースで知りました。めざましテレビでも、時間を割いて報じていました。3月1日午後6時5分、都内の病院で死去したそうです。78歳でした。

本名は「釜萢弘=かまやつ・ひろし」。めずらしい苗字ですが、本名だったんですね。2016年5月に肝臓がんが見つかり、9月に公表していました。12月には、ザ・スパイダースでともに活躍した堺正章(70)の70歳を記念したライブに飛び入りで参加し、デュエットを披露したことが話題になりました。それから3か月での訃報。残念です。

多くの人がつぶやいていますが、kojiも「一つの時代が終わったな」とズシリと感じました。kojiにとっては「”ど真ん中の主役”ではないけれど、存在感のある人物」でした。1970年代、吉田拓郎がスーパースターだとして、その横や背後に常にいる無視できないミュージシャンという感じです。悪い意味ではなくて、「黒幕」というイメージでもありました。
本当に、一つ大きな星が堕ちた、と思います。腹にこたえました。

スガシカオとの縁もあった

kojiはここ10年ほど、スガシカオを一番よく聞いています。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマ曲「Progress」を聞いて、一気に気に入りました。今回、ムッシュかまやつの訃報を聞いて気になって調べてみたところ、ムッシュとスガシカオは縁があることを知りました。”深い縁(えにし)”ではないですが、「我が良き友よ」聞きながら成長してきて、今スガシカオをよく聞いているkojiにとってはとても興味深いことでした。

はじめ人間ギャートルズのエンディング「やつらの足音のバラード」

「はじめ人間ギャートルズ」は何年たっても忘れられないアニメ。小さいころ、よく見ていました。そのエンディングは、「なんにない、なんにもない、まったくなんにもない」。曲名は覚えていませんでしたが、いつでもそらで歌えます。その曲、実は、かまやつひろし作曲でした。歌詞はマンガの原作者園山俊二。オリジナルは、ちのはじめ が歌っているのですが、かまやつひろしとしてセルフカバーもされています。

その曲をスガシカオもカバーしていることを今回初めて知りました。「秘密」という曲がシングルで出されたときのB面に納められています。

どちらも、いいですね。今回、オリジナルも含めて3つのバージョンを何度も聞いてしまいました。さらにかまやつ版をカバーした動画もたくさんあります。

「はじめ人間ギャートルズ」は1974年10月5日に放送開始。土曜日の午後7時から30分というゴールデンな時間帯です。kojiは小学校5年生だったことになります。スガシカオは1996年7月生まれの3つ下。小学2年生だったはず。当然、リアルタイムで見ていた可能性があります。スガシカオは洋楽の影響を強く受けて来ましたが、小さいころの「はじめ人間ギャートルズ」の体験は、くっきりと残っていたのではないかと想像します。

エンディングのほうが印象的ですが、オープニングのテーマ曲もかまやつひろし作曲でした。ムッシュは1939年1月生まれで当時は、35歳くらいですね。1970年にザ・スパイダースを脱退してから4年後のことです。

かまやつに見いだされた武部聡志

現在、音楽プロデューサーとして不動の位置を確立している武部聡志。今回の訃報に関連して、その名前が登場していました。武部さんを大きく羽ばたかせたのはムッシュだったとのことです。音大生だった20歳で、ムッシュのバックバンドに参加しています。また、ムッシュのアルバム制作では編曲・演奏を任されました。「あの時の出会いがなければ今の自分はありません」ということでした。ムッシュは武部さんをほかのミュージシャンにも紹介したりしたそうです。
このあたりの経緯は、こちらのインタビューを参考にしました。→「Musicman’s RELAY 第66回 武部聡志 氏」

スガシカオは、この武部聡志がプロデュースするユニット「kōkua(コクア)」にボーカル、作詞・作曲として参加して、「Progress」を作りました。この曲のソロ名義で紅白に出演することでスガシカオの名前は広く知られるようになります。
見方によっては、「武部聡志との出会いがなければ、今のスガシカオはない」ということになります。つまり、かまやつひろしと会わなければ武部聡志は今の武部聡志ではなかったし、武部聡志に会わなければスガシカオは今のスガシカオではなかった。ゆえに、かまやつひろしあっての今のスガシカオである。

私kojiとしては、「これはすごい!」と思ったのですが、いかがでしょうか?

かまやつひろしといえば、「我が良き友よ」です

kojiは「ムッシュかまやつ」よりも「かまやつひろし」のほうがしっくり来るのですが、1989年以降はミュージシャンとしては「ムッシュかまやつ」が正しい呼び方だそうです。愛称としてはそれ以前から「ムッシュ」なので、この記事の中でもいろいろな呼び方が混在していますがご了承ください。

なんといってもかまやつひろしといえば、「我が良き友よ」です。吉田拓郎作詞作曲なんですがね。これも、歌詞を見なくても歌える曲です。
YouTubeに吉田拓郎との共演、2006年のつま恋の動画がありましたので、載せておきます。バンジョーの音が、懐かしい!!

wikipediaより———–

歌詞に出てくるバンカラの大学生は吉田の大学時代の同級生がモデルである。また、歌詞がかまやつのイメージと合わないためか吉田にバンカラ気質なイメージがついてしまい、吉田があるブティックへ行った時に店員から「あれ?今日は下駄じゃないんですか?」と言われたそうである。

kojiは都会の大学生は、下駄をはいているんだろうなと思ったものです。今日、改めて聞いてみて、「女郎屋(じょろうや)通い」という言葉(今では死語に近いですね)、40年前はまだ歌詞になっていたんだなあと、軽い驚きを感じました。そして、kojたち以上の人たちのほうが、ノスタルジーを感じるのかなと思いました。

この「我が良き友よ」のB面は「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」という曲。このことも今回初めて知りました。発表当時は散々な評価でしたが、近年、評価されるようになりました。動画を見ましたが、確かに今でも通じる曲だと思いました。語りかけるような出だし。さびの部分は、哀愁を感じさせるメロディーがあります。歌詞は、奥が深いと思いました。何かに凝ることを勧めています。

ゴロワーズは若いころに吸ったことがあります。(kojiは煙草をやめてから結構たちます。)遠藤周作が吸っていたらしい。短くて、両切り、葉巻のような強い香りがあります。フランスの煙草。おいしかった。函館では、ボーニデパートに売っていました。お金があれば、吸い続けていたかもしれません。お金があるときだけの楽しみでした。そんなことも思い出しました。
その当時は、当然この曲は世に出ていましたが、知りませんでした。知っていたら、さらに愛着が増していたでしょうね。曲にも、ムッシュにも、ゴロワーズにも。

おまけ。GSおそるべし。ザ・スパイダースはすごかった。

上にも書きましたが、1963年生まれの私koji世代は、グループサウンズ(GS)の影響はほとんど受けていないと思います。物心ついたころGSが終焉しています。wikipediaによると「1971年に入るとほとんどのグループが解散・自然消滅をした」そうです。小学校2年生の時です。

後になって、「だれだれはあのグループにいた」ということを聞いて、びっくりしたりしました。萩原健一は「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」なんかで見て、かっこいい役者だと思っていましたが、ザ・テンプターズのボーカリストだったというではないですか。のちに、「大阪で生まれた女」はヒットしましたが、歌い手という印象は、私kojiにはあまりなかったです。
役者だけでなく、ソロ歌手やミュージシャン、プロデューサーなど、GS経験者が日本の音楽界、芸能界を支えているんだなと思います。グループサウンズ恐るべし!です。

かまやつひろしが所属した、ザ・スパイダーズも素晴らし人材の集まりだったようです。
リーダー田邊昭知は、田辺エージェンシーを作って、日本芸能界の裏方として大きな役割を担うことになります。

堺正章、井上順は言わずと知れた、テレビの人気者。特に堺正章は今でも各種バラエティの司会を続けています。

そして、キーボード担当だった、大野克夫は、テレビドラマの音楽を担当するなど幅広活動をしています。特に、「太陽にほえろ!」の音楽を担当したことは有名ですね。あのメロディーも忘れられません。「太陽にほえろ!」のテーマを最初に演奏していたのは、井上堯之バンド。ザ・スパイダーズ時代は井上孝之という表記だったギタリスト井上堯之が率いるバンドでした。

かまやつひろしも、正直言って、GSと結びついていませんでした。調べてみて知りましたが、ザ・スパイダースに後から加入して、解散前に脱退を表明したということでした。父はジャズシンガーのティーブ・釜萢
、森山良子とも親戚関係という音楽一族の中に育ち、GSを潜り抜けて、「ムッシュかまやつ」という世界を作り上げたんですね。kojiの知らないことがまだまだたくさんありそうです。その業績をまた、探っていきたいなと思いました。
ご冥福をお祈りいたします。

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さっきHBCラジオ「カーナビラジオ」でパーソナリティのヤスさんが、「音楽的にもすごい人だった」ということを力説していました。今でも通用する楽曲を50年前に作っていた!とのこと。音楽に詳しい人ほど、そのすごさがわかるんだろうと思います。
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日本ハムファイターズの応援団が得点後に演奏する「おーいおーい北海道」。正しい曲名は「I’m A 北海道 Man」。なんとこの曲も、かまやつひろし作曲でした。日本ハムファンとしてもお礼を言います。
「ムッシュ、ありがとう!」