お酒を飲まない人も痛風にご注意!

「風が吹いただけでも痛い」ことから名前がついている病気、痛風。中高年男性に多く、現在国内に100万人いると言われています。またその予備軍である高尿酸血症の人はその10倍の1千万人にも上るそうです。痛風の原因とされるプリン体が比較的多く含まれることから、ビールの飲み過ぎが痛風を引き起こすと一般的に考えられています。しかし、防衛医大の研究チームが、普段お酒を飲まない人も体質的にお酒が強ければ発症のリスクが高いということをつきとめました。

痛風リスクにかかわる遺伝子

防衛医大の研究チームが注目したのは、アルコールの分解過程で働く「ALDH2」という遺伝子です。この働きが生まれつき強いとお酒に強く、弱いとお酒に弱いことがわかっています。この遺伝子を、男性痛風患者1048人と痛風にかかっていない正常な尿酸値の男性1334人とで比較した結果、遺伝子の働きが良くお酒が強い人は、弱い人に比べ痛風の発症リスクが2.27倍になりました。

ただこの結果だけでは、お酒が強いからたくさん飲む=痛風になるという可能性もあります。そこで、普段お酒を飲まない人に絞って比較。その結果、やはり遺伝的にお酒の強い人の方が発症リスクが1.93倍高いことがわかりました。普段お酒を飲まなくても、遺伝子的にお酒に強い人は、痛風になりやすいということが証明されたのです。

痛風予防!お酒を飲まない人ののための心構え

肥満にならない または 肥満解消

・肥満になると中性脂肪が増えます。中性脂肪には尿酸の産出を促す働きがあります。

ストレスをためない

・ストレス状態になると、尿酸の排出がうまくいかなくなることもあります。

食生活に気を付ける

・食べすぎ注意・・・腎機能の低下や肥満につながる

・プリン体の量はあまり神経質にならなくてもよい・・・プリン体の多い食べ物は控えた方がいいことは確かですが。
リン体が代謝されて尿酸になるので、プリン体が多い食品を沢山食べれば尿酸が増えます。しかし、「食事から摂るプリン体よりも、自分自身が作り出すプリン体の方が尿酸値上昇のに与える影響が遥かに大きい」ということがわかってきました。

痛風とお酒

アルコールが代謝される時に尿酸が産出され、尿酸値が上昇します。お酒は、プリン体を含む、含まないにかかわらず尿酸値上昇の原因になります。
ウィスキーや焼酎などの蒸留酒には、尿酸に変化するプリン体がほとんど含まれていません。ビールには他のお酒よりプリン体が多く含まれることから、「ビールこそ悪役」とされてきましたが、ビール以外の連中も「なかなかのワル」であって、尿酸値上昇に関係するということはしっかりと意識しておかなければなりません。

痛風アラカルト

改めて、、、痛風とは

痛風とは、身体に尿酸がたまり血液中で結晶化して関節などに沈着し、炎症反応を起こす病気。よく発生する箇所は、くるぶし、足の親指の付け根、かかと、手首、ひじ、肩などです。尿酸値が高まると痛風になる可能性も高まり、7.0mg/dl以上になると要注意状態になります。その尿酸はプリン体が肝臓で代謝され最終的に尿酸に変化したものです。尿酸の原料であるプリン体摂取が痛風の最大の原因と考えられていた時期もありますが、現在ではそう単純なものではないことがわかってきました。

高尿酸血症(血液中に尿酸が多い状態)には痛風以外のリスクが

高尿酸血症の最大のリスクは痛風です。しかしそれだけではなく、は動脈硬化リスクの一つでもあります。心筋梗塞などを起こしやすくします。

痛風と女性ホルモン

女性ホルモンには尿酸の排泄を促す働きがあるため、閉経し女性ホルモンが減少すると、尿酸の排泄が困難になり、血清尿酸値が高くなりやすくなります。女性ホルモンの減少によって脂質代謝がうまくいかず、太りやすくもなるので、痛風リスクが高まります。

閉経に限らず、女性のライフスタイルの変化や社会進出などによって、女性ホルモンが減少している女性が増えてきているようです。そのことが一因となっていると思われますが、女性の痛風患者は増加しています。

痛風は贅沢病か?

遺伝子解析により、痛風の原因について、遺伝子が鍵を握っていることがわかってきました。今回、新聞にも取り上げられた「ALDH2」の働きの強さや、それ以前に報告されていた”遺伝子「ABCG2」の変異”などです。
【参考】→尿酸排出トランスポーター ABCG2/BCRP
と痛風発症リスク

自分が痛風になりやすいのか、そうでもないのかは家系を見渡すことで、大まかには推測できそうです。また、遺伝子検査をしてもらうという道もあります。(費用は1万5000円程度)

古い時代においては、痛風は贅沢病と言えた(と思う)。それは、プリン体を多く含むものを食べていたから、というよりも、おそらく十分すぎるほどの量を食べていたからということなのだろうと推測します。また、庶民が十分に飲むことが出来なかったかもしれない酒を好きなだけ飲めたことによるのはないでしょうか?そこに遺伝子が絡んでくる。
古い時代の庶民は、遺伝子的に痛風のリスクが高い人も、食生活や生活習慣などによって引金が引かれることは少なかれずに済んだのだろうと思います。

現代においては、多くの人が毎日充分におなかを満たし、好きなだけお酒を飲むことが出来ています。それが贅沢だと言えなくなりました。ということは、現代では痛風は贅沢病ではなくなったと言えます。

まとめ

遺伝子の働きや、生活習慣などによって、尿酸の生産が過剰な人、尿酸の排泄が悪い人など個人差が出てきます。どれだけ不摂生をしても尿酸が上がらない人もいれば、しっかり食事制限をしていても尿酸が上がってしまう人はいるということになります。
食事や運動を気を付けても尿酸が上がってしまう人は、医療機関に相談すべきです。定期健康診断がいいきっかけだと思います。人によっては内服で尿酸値をコントロールすることが必要なこともあると思います。早めに動いて、痛風の激痛を回避しましょう。